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『デッドプール』: マーベルの皮を被ったアメリカのバカ映画

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デッドプールことウェイド・ウィルソンは改造人間である。彼を改造したウェポンX計画はミュータント技術の軍事利用を企むアメリカ政府とカナダ政府の合弁秘密結社である。デッドプールエルム街の悪夢』みたいな顔面を元に戻すためにウェポンX計画と戦うのだ!


何やらアメリカ興行収入が凄まじいらしく、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』とか『X-MEN』シリーズよりも売れているらしい。


これはどういうことかと言うと、アメリカ人の観客はもう"正義を振りかざして世界のために戦ういい子ちゃんなヒーロー"にお腹いっぱいということだ。


"世界警察アメリカ"なんて時代は終わって、もっぱらのトレンドはメキシコとの国境に万里の長城を築いてアメリカ大陸に引きこもる帝国主義である。ヒーロー軍団が国連傘下に入って世界のために戦うなんてマジでナンセンス


これからの時代は肩の力が抜けたドメスティックなヒーロー(?)が丁度いい。


まあこのデッドプールという奴は色々ひどい


ヒーローなのに、人助けのシーンは一つもない。悪人をたくさん懲らしめているが、全ての動機は、恋人を助けることと自分の美容整形である。


ヒーローなのに、懲らしめ方がえげつない。背中にさした刀で人間の首をばっさばっさ切り落とし、銃を構えればほとんどヘッドショット。整氷車でゆっくり轢き殺すという通な趣味も。


ヒーローなのに、観客に話しかける。超メタフィクションポストモダン。自己言及。なんかこいつだけ物語上の神みたいなポジションを占めている。


こういう残酷な描写とかメタフィクション的ないきふんタイニー・トゥーンズとか20世紀フォックス・アニメーション(『ザ・シンプソンズ』とか『ファミリー・ガイ』とか)に近いものがある。けど、アニメ的なリアリティには陥っていなくて、なんかそれっぽい真面目なリアリティはギリギリ保たれている。


それと、数えきれないほどのポップ・カルチャーに関する言及(イースター・エッグ)。緑のスーツ(『グリーン・ランタン』)とか、『127時間』のあれとか、『スター・ウォーズ』語れる彼女とか、ガンダルフ(『指輪物語』)に対する無慈悲な罵りとか、やらやらやら。下のサイトではそんな諸々の言及をまとめている。100個もある…。


whatculture.com


諸々の特徴を鑑みて、シネフィルがこの映画を好きになるのは想像に難くないが、そういうのを全然知らない人が観ても、きっと楽しい。


目新しいアクションはほとんどないがパルクールみたいなデッドプールの動きは楽しいし、鋼鉄ロシア男と怪力巨乳女の殴り合いとか、工事現場でクレーンとか資材がぶわーーーって感じのやつとか、まあ、楽しい。


主人公と恋人の恋愛模様も良い。連続したセックスシーンで、物語の時間経過と恋人同士の愛の深まりを表現するところも、まあ、なんかいい。


全部ひっくるめて、まあなんか、マーベルの皮を被ったアメリカのバカ映画って感じで、傑作だった。


これだけ売れてるから、やっぱり続編もあるみたい。他の世界軸のデッドプール達と手を組んでチームつくって、それでアベンジャーズと戦うとかなったらおもしろいよね。犬とか。首だけのやつとか。


ああでも、目からビームだけは勘弁な。