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本・映画・アニメ・落語・漫画を節操なく

2016年、世界の小説はドコにいるのか

暇に任せてトマス・ピンチョン『重力の虹』にチャレンジしてみたのだけれどちょっと手に負えなくて、次はどんな本を読もうかなあ、今面白い小説ってどんなんかなぁ、柴田元幸に聞いてみようと思って『Monkey』のバックナンバーを買った。 特集は題して『2016…

『ヒメアノ~ル』: 幸せの脆さと(終わりなき)日常の退屈さ

(C) 2016 「ヒメアノ~ル」製作委員会 濱田岳、ムロツヨシ、佐津川愛美の青春(?)ラブコメディだと思ったら、佐津川愛美の裸体を惜しげもなく披露するラブシーンを境に、殺人マシーン森田剛がバッタバッタと人を殺すジェノサイド映画へと変貌。バッドを振り回…

『そこのみにて光輝く』: 今この時を生きる人の身体は美しい

この映画つくった奴誰だよ。いい加減にしろよ。週末なんだよ。日曜日なんだよ。こんなに泣かせてどうしてくれんだよ。ほんといい加減にしろよ。 佐藤達夫は採石場で働いていたが、ある出来事をきっかけに仕事を離れ、街で自堕落な生活を送っている。ぱちんこ…

『her/世界でひとつの彼女』: "疑似的な"コミュニケーションが誰かを救うとしたら

トロント大学がつくったSuperVisionが人工知能のコンペティションで戦慄のデビューを飾ったのが2012年。トロント大学のジェフリーヒントン教授らが開発したディープラーニングという機械学習方法が瞬く間に普及し、あれよあれよと人工知能が世界的ブームにな…

ウラジミール・ソローキン『親衛隊士の日』: 生物ドラッグ、集団アナルセックス、小型ドリルSM、何でもありなDJソローキンによる反権力バイブス

本を読み終わって、「はぁ面白かった」と息をついて、改めて表紙を見て、ようやく気付いた。モチーフが男根と精子じゃねえか。 2028年のロシアは、ツァーリズム(絶対君主制)が復活し、皇帝を頂点とした独裁国家となっていた。国家の反逆者を取り締まる親衛隊…

『デッドプール』: マーベルの皮を被ったアメリカのバカ映画

(C) 2016 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved. デッドプールことウェイド・ウィルソンは改造人間である。彼を改造したウェポンX計画はミュータント技術の軍事利用を企むアメリカ政府とカナダ政府の合弁秘密結社である。デッドプー…

ウラジミール・ソローキン『氷』: "肉機械"である我々はどうすれば幸せになれるのだろう

氷三部作の第二作(執筆順では一番目)。最近ソローキン世界に肩までどっぷり浸かって、もう、抜けらんないの。(氷三部作の第一作『ブロの道』の書評はこちら) 1941年のロシア、コリュバキノ村に住む金髪碧眼の少女ワルワーラ・サムシコフは、独ソ戦の勃発によ…

ウラジミール・ソローキン『ブロの道』: 氷が肉に食い込み、骨を砕く時、心臓(こころ)が目覚める

ロシアが誇る変態小説家ウラジミール・ソローキンの著作の中でも評価の高い『氷三部作』の第一作(執筆されたのは二番目)。『青い脂』のようなアヴァンギャルド的エロさとグロさを除外したら、手に負えない狂気性だけが残ってしまった、そんな怪作。 アレクサ…

『アイアムアヒーロー 』: ゾンビ(ZQN)という名の現実を散弾銃でブッ倒す

©映画『アイアムアヒーロー』製作委員会 なんばのTOHOシネマズで『アイアムアヒーロー』を観てきた。隣に座っていた女子高生二人組が、上映前も、予告の時も、本編始まってからも仲良くしゃべっていたのに、ドランクドラゴン塚地のぶっ飛んだスプラッターシ…

安部公房『R62号の発明・鉛の卵』: ナンセンス世界には死者が漂う

この前、EXPOCITYで『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を観た帰り、そういえばタマフルで宇多丸師匠が万博記念公園に行った話をしていたな~と思い、行ってみた。入場料は250円。ゲートをくぐるとすぐに、太陽の塔がそびえたっている。生まれも育ちも…

『マルコムX 』: "ありのままの自分"を見つける物語

フィラデルフィアの大学に在籍している時、東海岸の都会の大学らしく、教授陣はだいたい左寄りだった。皆、ニューヨーク・タイムズを購読し、ブッシュ政権の失策を批判し、イリノイ州選出の民主党上院議員にお熱だった。 ベビーブーマー世代が多く、彼・彼女…

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ 』: 大量の特殊能力者がバトルをしておもしろくないわけがない

エキスポシティの109シネマズでIMAX3D字幕版を観てきた。日本一のIMAXスクリーン。とにかく画面は超デカい。大阪中之島のプロジェクションマッピングぐらいでデカい。音も脳みそ揺れるくらい響くし、臨場感が最高だった。 内容も良かった。 世界規模で発生す…

ウラジミール・ソローキン『青い脂』: おバカで下品で猥雑で、息を飲むほど美しい

みんな大好き現代ロシアの小説家、ウラジミール・ソローキン。若い頃はソ連非公式芸術集団モスクワ・コンセプチュアリズムのメンバーとして、パフォーマンスをしたり、「心臓はオナニーのせいで腐っている」というテクストが書かれた『オナニウム』という中…